第15章 落涙
ぬるめの湯船に潜り、耳をふさぎ鼻だけ出して瞼を閉じる。
無駄な音が聞こえない世界………。
入野さんに支えられるようにして立ち去るあの人。
泣き崩れる姿に一瞬言葉を失った。
全てを理解した中村さん。
戸惑いながらも、受け入れた岡本さん。
岡本さんには、私はどう映ったんだろう。
きっと、もう見てくれない。
でも…あの人のものにならないなら…
それだけで十分だから。
私は、元々キレイではないから。
心まで汚れちゃった。
こんな私を愛してくれる人なんているのかな。
鼻の奥が痛い。
唇を噛む。
乱れる呼吸。
少し息苦しいだけ。
泣いてなんか無い。
水の中なら泣いてるかなんて、自分にすら分からないもの。