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逢ふことの(裏)~声優さんと一緒~

第15章 落涙


スタジオを出て、歩道を歩く。

広い歩幅に、私は少し小走りになる。

「今日で、ここに来るのも最後だな。」

「日菜乃とも会えなくなるな?」

「そうですね。」

「でも、もともと大して被ってなかったじゃないですか。」

「お前さ…前から思ってたけど、俺の前だと別人だよな。」

「達央さんには演じる必要がないので。無駄な労力使いたくないんです。」

「意外と割り切ってんだな?」

歩くスピードが遅くなる。
どう言う風の吹き回し?

「今まで散々無視してきたくせに、何で今さら話し掛けてくるんですか?」

「突っ掛かるなよ…怖い怖い。」

肩をすくめて、両手で両腕を擦る。

「達央さんにそんなこと言われる筋合い無いんですけど?」

「………本当に、お前誰だよ。」

「よく、その性格バレなかったな?」

「女性なんて、みんな似たようなもんですよ。」

「私だけじゃないです。」

「ふーん。」

明らかに興味なさ気な反応に目を細める。

「お前、打ち上げ行くの?」

「え?」

「打ち上げ。」

「一応新人なので。仕事でも入らない限り行きますよ。」

「残念ながら、行かない口実は無いです。」

「ふぅん。そうなんだ。」

「達央さんは、行くんですか?」

「んー。どうかな。」

「そうなんですね。誰も私が参加しても喜ぶ人なんていないですし。」

「居場所も無いし。時間を見て帰りますよ。」

視線を落とせば、意外な言葉が返ってくる。

「仕方ねーから行ってやるよ。」

「へ?」

「『へ』じゃねーよ。色気ねーな。」

「行ってやるって言ってんの。」

「だから。絶対に来いよ。」

おでこをピンッと指先で弾かれ、咄嗟にその場所を擦る。

達央さんは、私を追い抜き少し先の角を曲がる。

「あのっ」

少し声を張り達央さんを呼び止める。

「俺、車こっち。じゃーな。」

軽く手を上げ、すぐに姿が見えなくなる。

達央さん……

本当に何考えてる人なんだろう………。
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