第3章 憧憬
意気揚々にスタジオの扉を開ける。
廊下の少し先に毎回会えるのを楽しみな人の背中を見つけた。
「入野さっ」
話し掛けようとしたけど、そんな雰囲気じゃない。
見つめる。
その視線の先。
薄々は感付いてた。
別の現場で見かけた事があったから…。
仕草が女性らしくて。
凛としてて。
でも、いつも少し気怠そうで。
少し掴めない人。
私とは正反対の大人な女性。
きっと入野さんは、この人が…
私にとっては憧れの入野さん。
その入野さんの気を引けるこの人は、どんな人なんだろう。
私の中で何かが燻る。