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遠い約束

第5章 よっつ振って


「もう、ヘイキ」
「ん。―――幸村」
ふ、と。持ち上げられた二対の瞳が、今度こそ真っ直ぐに人の心を覗きこむ。

「なんだい、仁王?」
もしかしたら、責められるかもしれない。
平然と構えながら、思う。
知らなかったとはいえ、彼の“大切な人”に敵意を向けたのは、流石にまずかった。
それなりに覚悟を決めた気でいた。
だが、それも一瞬にして破られた。
「ユキムラ?」
「幸せな村で幸村じゃ。ちなみに、さっき話した部長」
今返事したヤツな、と続けられた声に。
「テニス部の部長…?」
へぇ、と気のない相槌を打って。
少女は金に輝く頭を丁寧に下げた。
「失礼しました、幸村さん。北里と申します」
その隣で軽く首を傾けて仁王が言う。
「スマンの、変なモン見せて。マネージャー候補、連れてきたナリ」
金と、銀。
笑みのあるなしは違うが、どちらも表情を読ませないという点においては一致する。

さっきは驚いてちゃんと見なかったが、こうして見れば二人は本当によく似ている。
外見ではなく、中身が。
つまりは、人形のように綺麗に見える北里さんも相当な厄介者、というわけだ。
『類は友を呼ぶ』の典型例を前に、苦笑いが浮かんでしまうのは、この際仕方のないことだろう。
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