第2章 理解できない理解者
手が痛え。
肩がバキバキ鳴る。
でもまだまだだ。
まだなってねえ。
そういえばさっきは五十嵐サンには悪いことをしてしまったな、初対面なのに印象が非常に悪かったと思う。
五十嵐めい。
彼女の名前を知ったのは中学に上がって間もないときだった。
廊下に貼り出されたでっけー絵画。
金賞のマーク。
芸術とかそういうの興味なくて、素人な俺にもこれはすげー作品なんだなっていうのはわかったし、すげー奴…天才っていうのは意外と身近にいるものなんだな、と思った。
まあそれぐらいだが。
ところで、なんで五十嵐サンあんなとこにいたんだろう。
受験生も暇じゃないだろうに。って俺が言える立場じゃないが。
…帰ったらちょっとは勉強するかな。
外に出ると冬の北風が温まった身体の熱を一瞬で奪い去っていく。
さっみ。早く帰んねぇと風邪引く。
俺は足早に校門に向かっていった。