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清くあれ【ハイキュー】

第3章 未来は拓けてる




「俺も、好きだから続ける。」
「やっぱ高校でも部活はバレー?」

影山くんは当然の事のように頷く。

「第一希望の、強豪の…白鳥沢は落ちたけど。」
「そ、そうなんだ。」

肝心な所で学力に左右されるなんて。

惜しいというか抜けてるというか、とりあえず影山くんは悉くわたしのツボを突く面白さを持っている。

あまり笑うと機嫌を損ねる事が分かったので、わたしは必死に震える頬を両手で押さえる。

「で、結局どこに行く事にしたの?」
「烏野高校。有名な監督が復帰するって話聞いて受けた。
五十嵐サンは?」
「奥羽。ってとこの美術科に行く事にした。続けるって決心もついた事だし、美大目指すつもりで、とりあえず高校から一回勉強してみる事にした。」
「奥羽か…」
「知ってる?…こっからだと烏野とは逆方向だね。」

その言葉に返事は返ってこず、わたしも言ってから、だからなんなんだ、と思った。


そう。だからなんだろう、となるぐらいには、わたしと影山くんは友達と呼ぶにはあまりに距離がある。

それでも同じ学校で過ごしていた今までは、すぐ彼の存在を認識できる囲いの中にいた。

けれど、卒業をしたら、それもできなくなるし。
お互いの高校の位置的にも、通学中に偶然会う、なんて可能性もないに等しい。


「もう、卒業なんだな。」

わたしがしみじみ実感した事は、思いもよらず影山くんの口からぽつりと呟かれて。

いつの間にか皆の歌声も聞こえなくなっていた。


それから卒業までの毎日は、兎に角駆け足であまり覚えていない。

そういうくらいだから特に何もない取り留めのない毎日だ。
つまり、あれから影山くんと話す機会は一度もなかった。

卒業式当日、最後の別れと完成した作品を取りに美術室へ行くと、窓から偶然見えた影山くんは後輩女子に話しかけられていて、ぶっきら棒な顔をして困っていた。

わたしはそんな姿にもくすり、と笑ってしまって。

完成した作品を窓から射す光に掲げながら、

「ありがとう。」

誰に言う訳でもなく、そう言うと、教室を出た。


わたしはそうして、中学校を卒業した。

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