第1章 それは何気ない放課後の
「おーい、片付けおわったかー?」
先生の声が響く。
少し救われた気持ちになった。
「スンマセン、あとこれ倉庫に片付けるだけなんで。
手伝わせて悪かった、あとはやるから五十嵐サンはもう帰っていいっスよ。」
返事をする前に影山くんは足早に倉庫に向かってしまった。
外へ出ると冷たい風が容赦なく吹く。
夜は大分冷えるなあ。
寒さでついその場で足踏みをしながら、今すぐ暖かい家でぬくぬくと過ごしたいとは思ったが、足取りは重くすぐ帰る気にはなれなかった。
校門の壁に凭れ、空を見上げる。
そのままずりり、としゃがみ込むと、風が当たる面積が少なくなって少し暖かくなった。
さっき、ひたすらサーブをうっている影山くん。
わたし、正直心を動かされた。
諦めようとしていた自分が恥ずかしくなった。
天才と呼ばれている影山くんは、誰よりもがんばっていたのだから。