第1章 それは何気ない放課後の
思わぬ事態になってしまった。
特別な思い入れがないとはいえ、話したことない子、しかもこんなかっこいい子と二人きりというのは緊張する。
「スンマセン、関係ねーのに手伝わせて。」
「いや、いいよ。こんな遅くまで練習してるんだね、お疲れ様。」
「五十嵐サンこそ、なんでこんな時間までいんスか、俺が言えたアレじゃないけど、3年なのに。」
意外。
わたしの名前を影山くんが知っているとは。
「びっくりした、わたしの名前、わかるんだ。」
「ああ…よく受賞してたから知ってる。たしか絵の賞。」
「……うん。」
まあ、前までの話だけど…
「わたしも影山くんのこと知ってるよ、有名人だもんね、コート上の王様?って呼ばれてる…」
そこまで言って、影山くんの顔が険しくなっているのに気づきハッとした。
「ごめんなさい、気に触ること言った?」
「……王様って呼ばれんのは、好きじゃない。」
尋常じゃなく険しい表情の影山くん。沈黙が冷たい。