第2章 わたしのすきなひと
「もしもし友梨香?どうしたんだ?」
「まーくん?あのね、今日時間ある?」
帰り道を歩きながらまーくんに電話をかける。
心なしかいつもより疲労感を感じる声音だ。
「えー……っとな、ちょっと待ってな…」
何やら邪魔をしてしまったようで、少し申し訳なくなる。
後ろでわいわい声が聞こえたのが遠ざかって、お待たせ、とまーくん。
「ちょっと遅くなりそうだけど、平気か?よかったらお前ん家寄るけど。」
「時間は全然大丈夫!けど、ごめんね、もしかして今日忙しい?」
「ん〜、まあ、そうだな。2年になって拍車をかけて忙しくなったな。言っても忙しいのはいつもの事だしな、大丈夫だ!」
「そ、そっか…」
やっぱ電話かけない方がよかったかな、こんなに疲れてるのに、小テストの結果が悪かったから勉強教えてくれとか下らない理由で呼んだのは、さすがに迷惑だ。
しかも内容バッチリ分かってるし。
「やっぱ今日、」
「あ、聞いてくれよ。凛月が今日提出の課題出さずに帰っちゃてさぁ…担任にも俺が凛月の世話係だと思われててこっちが色々注意されてまた散々だったよ…」
凛月。
また、りーくん。
「そ、そうなんだ。大変だったね。いつもお疲れ様だね。」
「ああ、愚痴っぽくなって悪かったな。じゃあまた後でな!」
わたしもじゃあね、と言う。
まーくんは絶対自分から通話を切らないから、3秒ぐらい数えてから、通話終了ボタンを押す。
通話の名残惜しさも程々に、わたしはケータイをポケットにしまうと、直ぐさま走り出した。