第14章 陽だまりと靄
「実は、今までまーくんと二人で写真撮った事がなくて…記念にツーショット撮りたいな〜って…」
「なんだよ、そんなことか。でもいいな、撮ろう撮ろう!」
早速スマホを取り出し、海を背景に写真を撮ろうとするが、逆光で顔が真っ暗になる。
二人で顔を見合わせて苦笑いして、結局なにもないところを背景に、写真を撮った。
写真を確認すると、満面の笑顔の横に、少し引き攣った笑顔の俺。
「ご、ごめんな。もう一回撮ろうか」
「大丈夫、十分かっこいいよ」
やばいな俺。もしかしたら、今日一日こんな表情だったのか?
嫌な思いをさせていないか、急に不安になる。
すると、何故か友梨香が申し訳なさそうに、目を伏せる。
「……ごめんね、夏休みもレッスンで忙しいのに。今日は疲れたよね」
「いや、ちょっと待て。違うんだ!」
咄嗟に友梨香の手を握る。
「本当に、楽しかったんだ。それに、友梨香のこと、改めて…友達じゃなくて、ちゃんと恋人として好きなんだってことが分かったから」
友梨香は驚いた表情のまま、俺の顔を見つめる。
「俺ってこういう色恋事にはどうしても鈍感みたいで、今までも多分友梨香の事好きだったんだけど、自分の気持ちにも、お前の気持ちにも気付けなくて。
すごい待たせたのに、今日みたいにちょっとしか一緒にいれなくて。本当に申し訳ないと思ってる。それでも、友梨香は今日一日、楽しそうにしてくれて。嬉しかった。…ありがとうな」
友梨香の表情は固まったまま、俺の言葉を聞き終えた瞬間、目からつぅ、と涙が零れた。
「え、どうした?大丈夫か?!なんか変なこと言ったかな、俺」
「いや、違うの!違くて…」
友梨香は慌てた様子で否定するが、その目からは止めどなく涙が溢れ出す。
「ずっと…好きだったから。ずっとこうして、二人でいるのが憧れだったの、それに…
まーくんから、そんな風に言ってもらえる日が来ると思わなかったから、嬉しくて」
しゃくりあげながらも、懸命に言葉を紡ぐ友梨香。
罪悪感で、押し潰されそうだった。
それでも、目の前の友梨香が愛おしくて堪らなくて。
目の前で、俺を想って泣いてくれている女の子を抱きしめる。
馬鹿な俺には、その時、それしか思いつかなかった。