第14章 陽だまりと靄
俺らが住んでいるところも、山も海もあるし、そこそこの観光地だ。
あまり大きな声では言えないが、今日訪れた場所は俺らの住んでいる所より、観光するにはよっぽど廃れている。
目の前に広がる海周辺も、本当に田舎の港といった感じだ。
それでも、見慣れた筈の、寧ろしょぼいこの風景を前に、
「綺麗だね」
と友梨香は呟いた。
到着してすぐにも、茹だるような熱さに少しやられ気味になる。
とりあえず日陰に入ろうと、よくあるような売店で、ソフトクリームを注文した。
それも、バニラとかチョコとか、よくあるような種類のものだ。
それでも、友梨香は美味しそうに食べる。
熱さでソフトクリームが溶け、友梨香のスカートに垂れそうになり、慌てて手で受け止めると、
「ありがとう」
満面の笑みでお礼を言ってくれた。
ソフトクリームで体をほどよく冷ましたら、あてもなく歩き出す。
俺らの住む街よりも、沢山の蝉の鳴き声がする。
人の声がしないからだろうか。
それが、余計に煩い。
先程アイスを食べて引いた汗が、またじわじわと湧き出してくる。
ほどなくてして、錆びた看板がかかった商店街らしき場所を見つける。
「わ〜お、レトロ……」
友梨香が小さく溢す。
入り口近くでも、ほとんど人がいない。
というか、店のほとんどのシャッターが閉まっている。
さすがの友梨香も絶句したか、とちらりと目をやると、思いの外興味津々と言った感じで、
「行ってみよう!」
と、元気よく歩を進める。
面白いくらい人気がなくて、全ての建物が古くて。
そんな商店街を、何の目的もなく、ぶらぶらと歩く。
友梨香と手が当たった。
汗で、湿っている。
少しだけ躊躇った。
嫌な訳じゃない。今、きっと俺の手汗は凄いことになってきる。
それに、照れ臭かった。
けれど、
意を決して、その手を繋いだ。
ゆっくり握り返してくれた友梨香の顔は、真っ赤で。
「あついね」
そう言って、恥ずかしそうにもう片方の手で顔を扇いだ。