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ふたりごと【あんスタ】

第14章 陽だまりと靄





幸せだ。

可愛い。ただただ愛おしい。

こんな場所、本来だったらつまらないはずなんだ。


商店街の隅に、申し訳程度に開いていた小さなゲームセンター。

見るからに古くてアームの弱そうなUFOキャッチャーを見て、「絶対取れないよ」と言いながらも挑戦して、案の定取れなくて笑いあった。

これまた古びた定食屋。
海鮮丼を食べたら、想像以上に美味しくて、二人を目を輝かせた。


楽しくて、幸せで。


でも、心の隅の方に、黒い靄がずっと蟠っている。

スバル、北斗、真、あんず。

ちょっと前までは、二重スパイのように活動してた俺にとって、ユニットはそこまで重要な存在じゃなかった。

寧ろ、利用されてるんじゃないかって、疑惑すらあった。

でも、DDDを経た今、tricksterの皆やあんずは、かけがえのない仲間への変化していった。

今浮かぶのは、4人の顔。あのとき北斗に言われた言葉。

それが、ずっと引っかかって、でも、友梨香の笑顔を見ると一瞬で吹き飛んで、また数分もすれば、ふつふつと湯が沸騰するように、沸き上がってきて。


そんなことを繰り返していたら、あっという間に時間が過ぎていった。



熱いのに手を繋いだまま小高い丘に登って、見晴らしのいい場所へ立つ。

もう日が傾きかけていて、オレンジ色の夕焼けが辺りを染める時間になってしまっていた。


「まーくん、お願いがあるの」
「ん?なんだ?」

夕焼けを見ながら、またぼーっとみんなの事を考えていたら、友梨香の声にはっと我に帰る。



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