第12章 だいすきなひと
幼いときから完璧を求められた。
勉強も運動も、それ以外のことも。
無駄に器用で物覚えもそこそこ良かったわたしは、割となんでもできてしまった。
けれど、そこそこ出来るだけじゃ、母親は満足してくれなかった。
80点とれば先生からは褒められた。
けれど母からは怒鳴られる。
銀賞でもとれれば、集会で生徒たちの前に立ち、大勢の拍手を貰えた。
母親から貰ったのは、ため息ひとつだけだった。
80点から100点、銀賞を金賞にする。
それがわたしには難しかった。
何か飛び抜けて秀でたものがわたしにはなかったから。
それでも母親の期待は重くのしかかり続けて、毎日が、ただ辛かったのは覚えている。
しかし、いい成績を貰えれば、いい評価を貰えれば、母は満面の笑みでわたしを褒めてくれたし、ごちそうも用意してくれた。
それに、普段わたしや母に興味を示さない父親も、その時だけはわたしに
「よく頑張ったな」
と、ぶっきらぼうに頭を撫でてくれた。それが大好きだった。