第10章 罪悪感と欲求
麦茶を注いだコップを両手に向かうと、りーくんはわたしの部屋の棚を見て暇を潰しているようだった。
そこには、転校する前の学校や習い事で取った賞状やトロフィーの数々。
「ほんっと器用だよね〜。実際の友梨香は。ピアノ、習字、バレエ、英語……」
「そうだねぇ、なんでもできるよね、わたし」
えぇ…嫌味〜?と、りーくんは引いてるご様子。
けど、わたしには問題だ。
「どうして何でもできちゃうんだろうなぁ…そんな才能あっても、わたしにとってはどれもこれも必要ないのにね」
「いらないんだったら、捨てちゃえばいいのに」
意味わかんないの〜といい、りーくんがトロフィーのひとつを指で弾くと、コン、と無機質な音が小さく鳴った。
「…ねぇ。捨てちゃえばいいのにね。」
捨てられないのは、まだある可能性に縋っているからなのか。
開けっぱなしの自室のドアから、明かりの点いていないリビングをぼんやりと見つめる。