第9章 出会い
友梨香が手を差し出す。
さっき、転んで手をついた時にできた痛々しい傷口を差し出された。
またくらくらと思考が妨げられる感覚に襲われる。
僅かな理性と闘うも虚しく、その手で口を覆われれば、堪えることなんてできない。
動物のように掌を舐る俺を見る友梨香はとても満足気で、目をとろんとさせながら俺をじっと見つめていて。
俺は今、もしかしたら友梨香と同じような表情をしているのかな。
だとしたらすごく嫌だ。けど、今はそんなこと、どうでもいいや……
学校の中なのに、誰もいないような、二人だけの時間が流れていく中、校庭で遊んでいるま〜くんの、無邪気な声が遠くに聞こえた。