第8章 それは歪な
「…っ、りーくん、そこ、位置高い。隠せない。」
耳のすぐ下の首筋を噛まれている感触に身じろぎするけれど、りーくんはしきりに音を立てながら血を吸うのを止めない。
髪がかかってりーくんの表情が見えないので頬に触れて髪を掻き上げようとすると、りーくんは唇を舐めながら顔を上げる。
「やめて、触らないで。」
冷たく一言言うと、シャツの釦を外して胸元に噛み付く。
「ちょっと、…何個も噛み跡つけないでよ。」
「うるさい。ちょっと黙っててよ。」
明らかに不機嫌な声音につい押し黙る。
静かな夜空の下、虫の声に混じってりーくんの口から漏れる音、わたしの息遣いが聞こえる。
意識を集中すれば噛まれた所が痛くて、どのくらい経ったのか段々分からなくなってくる。
でもわたしはりーくんを止める事ができない。
まーくんもりーくんが吸血鬼という事は知ってる。
けれど、わたし達のこの関係性はまーくんには言っていない。
理由は分からないがりーくんも同じみたいで、血が欲しい時だけこっそりとわたしに連絡を入れてくる。
まーくんにばれたらどうなるんだろう。
わたしを思って止めてくれるのかな、りーくんを思って見過ごすのかな。
そして度々考える。りーくんを選んだまーくんを、その時わたしはどういった感情で受け止めるんだろう。
でも、