第8章 それは歪な
意識がぼうっとしてきたところで、りーくんが顔を上げる。
さっきの冷たい表情とは一変して、恍惚とした、満足気な笑みを浮かべながら、血が垂れる口からほう、と息を吐き、
「友梨香、いい子。」
とわたしを撫でた。
自分は触られたくないってさっき言った癖に、人にはこうして簡単に触る。
けれど、わたしは頬をゆるりと撫でられて、その表情を見せられただけで、ゾクゾクと背筋が震えた。
だから、まーくんにやっぱりこの事は言えない。
もしまーくんがわたしを思ってくれて前者を選んだとしても、それを煩わしく思えるくらい、わたしは好きな人に隠し事をする罪悪感より、
自分の快楽を優先してしまうのだから。