第8章 それは歪な
まーくんと楽しくお話しを堪能し、お店を出た直後スマホを確認するとりーくんからの着信履歴に気づく。着信から数分後にメールが入っていて
『学校にいるから』
と一言。
「どうした?」
まーくんもわたしと同じようにスマホをチェックしてたけど、首を傾げている様子だとりーくんから連絡は入ってないみたい。
早々にポケットにスマホをしまったまーくんはなかなか歩き出そうとしないわたしを不思議に思っているよう。
「…ごめんね、ちょっと用事ができたから先帰ってて!」
「えっ?大丈夫か?もう遅いし、一人じゃ危ないぞ?」
「大丈夫!友達から呼ばれたから一人じゃないし、こっからすぐ近くだから。 」
りーくんの名前を出したらまーくんも絶対ついてくる。
けど、今はきっとそれはだめ。
すぐ走り出さんとした足にブレーキをかけて慌ててくるりと振り返る。
「え、と、まーくん今日はありがとうね!…またどっか行こうね。」
「ああ。」
「まーくんからも誘ってね!」
「勿論。俺からももっと連絡する。」
柔らかく笑うまーくん。
そんな優しい笑顔は少しの我儘なんて許されてしまうんじゃないかって思わせるから、わたしはつい贅沢してしまいそうになる。
このまま抱きついて、まーくんの事が好きって言ってしまいたい。けれど、今はそれどころじゃない。
じゃあね、と名残惜しく手を振りながら背を向ける。