第7章 俺のものなのに
カバンを取るとすぐ教室を出て、歩きながらスマホを耳にあてるが、向こうが通話中なのか繋がる気配がない。
いつも暇してる友梨香の癖に、俺の電話に出ないってどういうこと。
ま〜くんに重ねて友梨香ともなると不満が苛立ちへと変わってくる。
乱暴に停止ボタンを押す。
日が暮れるには時間がかかりそうだし…
まだ高い日を鬱陶しく思いながらも、とりあえず紅茶部に向かおうと日陰を選びながらふらふら歩く。
すると、門の方に丁度ま〜くんの後ろ姿を発見した。
呼び止めて文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、いつも以上に急いでる様子が気になり軽く後をつけると、すぐそこの本屋で誰かと待ち合わせしていたようでそこで足を止める。
ま〜くんと対峙しているのは、眼鏡をかけた女の子、いや、遠目でも分かる。
友梨香だ。
何、そういう事。
苛立ちに任せて早速二人を邪魔しに行こうとするが、近づくにつれて友梨香の照れてふんわり笑う表情が、後ろ姿のま〜くんからちらりと見える赤い耳が、見えて。
心に黒い靄がかかる。
何これ。嫌だ。つまらない。
呼べばすぐ二人が気づきそうな距離まで近づいたのに、声をかける気にならなくなって、俺は踵を返した。