第4章 忙しさと
「百面相」
「ん……わっ!?」
声がして視線を上げると、目の前にどアップの顔。
驚いて後ずさる。
「ご、ごめん。想像以上のリアクション。」
「はー驚かせんなよ、あんず。」
我らがプロデューサー、あんずはふふ、と微笑む。
「何かまた悩み事みたいだったけど、大丈夫?」
「ああ、とりあえずはって感じかな。ありがとな。」
「んー、衣更くんはいつも一人で抱え込みすぎだから、偶には愚痴の一つでも溢してね。パンクしちゃうよ?」
ふわっと笑う姿に、和む。
雰囲気や容姿は似てないけど、こういう所、どことなく友梨香に似てる気がして落ち着く。
「そうだな、愚痴を言うのって苦手っていうか、あんまそういうの言える相手がいないんだよ。お言葉に甘えさせてもらうな。」
するとまたにこっと笑う。
表情が乏しい奴だと思っていたが、親しくなると意外と表情がころころと変わって面白い。
あまり表情筋が動かない所為か分かりづらいけれど。
プロデューサーに言われて一呼吸置けたし、順を追って仕事を片付けて行こう。でなけりゃ終わる物も終わらないしな。
友梨香へはこっちから連絡するとしよう。