第2章 後編
(あれ?)
ユメはその姿に少しガッカリする。
声が、あの人に似ていると思ったのだ。しかし違った。
青年の髪色は流れるような紫。
そして今男たちを睨み据えているその瞳の色はブルー。
あの金色の人とは、違う。
――この状況でそんなことを考えている自分に呆れてしまう。
「なんだぁ? お前」
「俺たち、今ちょっとキレてんのー」
「今用があるのはこっちのおねぇちゃん達で、お前に用はないわけよ」
そう言う柄の悪い男たちに比べて、その青年はあまりにも華奢に見えた。
だが青年は男たちに向って全く怯みもせずに言う。
「その子と知り合いなんだ。だからオレはお前達に用がある」
……え……?
瞬間、彼と目が合った。
なぜかドキンと飛び上がる心臓。
「はぁ? 何言ってんだ、こいつ」
「わざわざ俺たちにボコボコにされたいわけ?」
「なら、やってやろうじゃねーか!!」
そう言って男たちが一斉に青年に飛び掛った。
「きゃあー!!」
叫んで肩にしがみついてくる友達。
(やられちゃうよ!!)
ユメも絶望的な思いで彼を見守る。
……だが、勝負は予想外の方向へ向かった。
苦痛の叫び声を上げて次々に倒されていくのは、柄の悪い男たちの方。
「う……そ」
ユメはポカーンとその一部始終を眺める。
友人も隣でいつのまにか「きゃぁきゃぁ」と別の意味の叫び声を上げていた。
「なにあの人! 超かっこいいー!! ユメ知り合いなの!?」
「え? ううん、初めて……会う」
そんな会話をしている間に、決着はついてしまったようだ。
小さくうめき声を上げて地面に転がる無様な男たち。
その4人を見下ろす青年は、怪我をするどころか呼吸も全く乱れていない様子だ。
「加減が難しいんだ。死にたくなかったらもう立ち上がってくるなよ」
そう言って、ゆっくりこちらに歩いてくる彼。
「大丈夫でしたか?」
その声とその微笑が、あの人とダブる。
ユメは激しい胸のざわめきを感じた。
あの人じゃないのに……なんでこんなに……。