第1章 前編
「え!? わわっ」
「こわいっ! こわいーーー!!」
ぎゅーっと強い力で彼に抱きつく。
そうしないと今にも落ちてしまいそうで、本当に怖かった。
「あっ! すいません! 今降ります!!」
彼は慌てた様子で高度を下げる。
タっと言う音で地上に降り立ったのがわかった。
それでもユメはしばらくの間彼に抱きついたまま小さく震えていた。
「もう、大丈夫ですよ」
耳元で響く優しい声。
ユメは震えを止めて顔を上げる。
そこには少し赤い気がする彼の顔があった。
「す、すいません!!」
我に返り、ユメはパっと彼から離れる。
初めて会った人に、抱きついてしまった!
な、何て恥ずかしいことを……!!
「そ、それでは、オレはこれで……」
彼は地面を蹴ってまた飛び上がろうとした。
……行ってしまう!!
咄嗟に、ユメの手は彼のジャケットの裾を掴んでいた。
「え?」
「あっ」
彼がびっくりした瞳でユメを見下ろす。
自分でも何でこんなことをしてしまったのか、わからなかった。
……ただ彼に、このまま去って欲しくなかった。
「あのっ、……私の家族を探してもらえませんか!? はぐれてしまったんです!」
咄嗟に思いついた言い訳だった。
……今から考えると、初めて会った人にかなり図々しかったと思う。
それでもユメの必死の頼みを、彼は優しく受けとめてくれた。
「特徴を教えていただけますか? オレ近くを探してきますよ」
「えっと……」
ユメは家族の特徴を言い、彼はもう一度空に飛び上がった。
そんな彼の後姿を見送るユメ。
不思議と、彼が普通の人にはない空を飛ぶ力を持っていることに、驚きはなかった。
ウワサで聞いた、人造人間たちと戦う金色の戦士。
おそらく、いや、絶対それが彼なのだという確信があった。