第1章 前編
3年前、ユメの住む町は人造人間たちによってほぼ壊滅状態となった。
ユメは廃墟と化したその町を独りトボトボと歩いていた。
避難の途中、家族とはぐれてしまったのだ。
周りには人っ子一人見当たらない。
ただ寂しい風だけが傍らをすり抜けていく。
ずっと住んできた自分の町が、全く知らない町のようで……すごく不安だった。
そんな時だった。
……彼に会ったのは。
「危ない!!」
空から声がして、ユメはびっくりして顔を上げる。
すでに倒れ掛かっていた建物が、ユメに向って今まさに崩れてくる。
ユメはぎゅっと目を閉じた。
私……死ぬんだ。
そう思った。
しかし、衝撃は一向に来なかった。
そのかわりにおかしな浮遊感と、人の温もりを感じた。
「ふぅ、危なかった」
間近で聞こえたその声にユメはゆっくり閉じていた目を開ける。
最初に目に映ったのは金色の光。
それが人間だとわかるまで、少しの間を要した。
その人は、金色の光を纏っていた。
……キレイな男の人。
それが彼の第一印象。
「キレイ」というのは女の人に使う言葉だと思っていたけれど、彼にはぴったりだ。
すごく、綺麗に整った顔。
鋭いグリーンの瞳は細められ、不思議とひどく優しく映った。
おそらく歳はそう変わらない。
「大丈夫ですか?」
聞かれてハっとなる。
そして、自分がその人に抱きかかえられていることにやっと気付く。
「は、はい!」
ユメは顔を真っ赤にして、どもりながら答える。
「あ、ありがとうございました!」
「怪我がなくて良かったです」
にっこりと笑う彼。
その笑顔に思わず見とれそうになって、ユメは慌てて視線を外した。
そして、足元を見下ろしたユメは、今自分が宙に浮いているということに、気付いてしまった。
高所恐怖症のユメの顔は、一気に赤から青に変わる。
「きゃああぁーー!!」
無我夢中でユメは彼の首に噛り付いていた。