第3章 目覚めと出会いの朝
(……眩しい。)
障子の隙間から差し込む光に照らされながら優希はゆっくりと布団のなかで意識を取り戻す。外で小鳥が鳴く声がだんだんと大きくなる。障子を隔てて向こう側にいるであろう小鳥のかわいらしい声を聞きながら優希はゆっくりと寝返りをうった。横向きに寝ていた優希の細い腕が寝返りと共に宙を舞い、反対側の布団の上にゆっくりと着地する……はずだった。
「…………ん?」
優希の腕は柔らかいはずの敷き布団の感触のかわりに固く、ひんやりと小さな何かに触れた。ぼうっとした頭でそっと指を動かすと、今度はくしゃくしゃっとした何かに触れる。
「………あ…………れ……?」
ゆっくりと指を動かし、その正体を確かめようとする。ぷにっ、とほのかにあたたかくて弾力のあるものが人差し指に触れた。上下に動かすとそれはとても滑らかでさわり心地がいい。
「……なん……だろ…。」
ゆっくりと眼を開けた優希の目の前に何か小さなものが映った。握りこぶしくらいの大きさだろうか。黒い着物を来て、うでを組み、誇らしげに私を見つめるのはよく知っているあのお方。
のはずだが。
その目元や輪郭は少し丸みをおびていて、あの信長にはないはずの子供っぽい可愛らしさがある。こちらに伸ばされた手はふにふにと柔らかそうで大人のそれであるはずがない。
頭が追い付かない優希は大きく眼を見開くと、ガバッと上半身を起こす。すると肩のほうからごろんと何かが落ちるのが見えた。慌ててそれを両手で受け止め、そうっと手のなかを見てみる。
あっと大きな声をあげそうになった。手のひらのなかでしりもちをつくようにしゃがみこんでいる何かがそこにはいた。くせっ毛の髪に鮮やかな緑色の眼、不機嫌そうな顔でこちらを見つめる握りこぶしくらいの大きさのそれ。
やはり丸みを帯びた目元と輪郭を持つそれは素っ気ない態度を取りながらも、いつも優希の側にいてくれ世話を焼いてくれた家康
…らしきちっちゃな生き物だった。
自分のおかれた状況に理解できず、しばらく固まっていた優希。だが。
背後でもぞもぞと何かが動く音に気づいた優希はハッとするとくるんと振り返り、その辺りを見た。
正面は異常なし。
ということは。