第2章 それぞれの思い
石田三成は困っていた。
(どうしましょう。最近優希さまとお話しすることがないせいか、頭の中で優希さまのことばかりを考えてしまいます。)
どんなに字面を追っても内容が頭に入って来ない戦術書を丁寧に小箱にしまうと、後ろの方へと振りかえる。その無意識の行動にはっ、と気づいた三成は小箱に視線を戻すとそっと目を閉じた。
気になる戦術書などを見つければご飯を食べることも、寝ることすら忘れて書庫に篭る三成。そんな彼を見つけては片手で食べられる軽食や飲み物を持ってそっと中に入ってくる優希。とんとんと、控えめに触れられた肩の感触に気づいて振り向くといつもはにかみながら一緒にご飯食べよう、と告げる姿が目の奥ではっきりと思い浮かぶ。
うっすらと眼をあけ、少し困ったように微笑みながら巻物をもとあった場所に片付けると、胸元に手を当てて三成はもう一度眼を閉じた。
少しはやく、大きく鳴る鼓動に耳を澄ませながら三成は考える。
(なぜでしょうか。優希さまのことを思うといつも胸のあたりがほんのりと温かくなります。)