第4章 処遇
「……で、貴様にもこの者たちのことは何も分からない、ということだな。」
そう聞いてきた信長様はぱちん、と扇子を鳴らしながら閉じていくと側に置いてある脇息を指し示した。豪華な装飾がしてあるそれに、主人そっくりの顔をした小さなものがそれはそれは誇らしげに座っていた。
「はい……」
そう答えると私はそっとため息をついた。周りに控える秀吉さんたちは皆、静かに私たちの会話を聞いていた。でも、いつもの軍議と違って皆の手や視線はせわしなく動いている。
あの後のことを思い出すとまた顔がかあ、と熱くなる。朝、目が覚めたらそこにいた小さな信長様たち。何も考えられなくなって大きな声を出したら部屋にやって来た大きな信長様たち、というより本物の信長様たち。寝起きの、薄い白い寝巻きしか着ていない状態で皆に見られてる恥ずかしさと同じ顔をした人が自分の近くに、部屋の入り口に一気に現れたことに対する大きな戸惑いが頭のなかをすぐに駆けめぐった。
「……見ないで来ないで近づかないでー!!」
「「「「「「……え?」」」」」」
気がつけば私は再び大きな声をあげながら彼らを外へと無理矢理押し出して、障子を勢いよく閉めてしまった。
そして枕元にちょこんとたたずむ六人のちっちゃい信長様達を慌てて手ですくうと次々と側にあった小箱の中に入れていた。全員いることを確認してから小箱の蓋でそっと閉めるとその場にへなへなと座り込んでしまったのだ。
障子越しに聞こえる秀吉さんたちの大きな声。ことことこと、と小箱の中から聞こえる小さな音。
「……どうなってるの?」
そっと呟いた私の問いは誰の答えも得ないまま、静かになった部屋にそっと消えていった。