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大輪の花は刻を越えて咲く【イケメン戦国】

第4章 めぐりあい




手のひらに感じる雫を振り払うことなく男は項垂れる。なんだか物凄く、疲れてしまった気がするのは気のせいじゃないだろう。

あっ、と背後で小さく仲間達の声が聞こえた気がして薄く笑う。さっさと逃げれば良かったのによ。巻き添えくっちまうだろうが。

さっき腕に触りながら声かけてきた奴は強面だが気が小さくて優しい奴だった。女に触れようとした男の方はすけべだが人懐っこく、手先が器用だった。似たような境遇で出逢い、共に動くようになったあの二人。何故だか自分が頭のような立場になってあいつらを率いていた。どれだけ拳骨をしてやったか。気に入らねえ時には尻を蹴り飛ばしたりもした。なのにあいつらは逃げることもなく、俺についてきた。



…っんだよ、あいつら。
情けねぇ姿見せちゃうじゃねえか。



まぁ、どうでもいいか。
顔を覆っていた手を太ももに乗せ、握りしめる。脛に感じる地面の冷たさと荒い粒の感触。ゆっくりと息を吐き、吸い込めば植物と土のつんとした匂いが体に染み渡る。



――ここって、こういう匂いがすんだな。



今更気づいたその清々しさが心地いい。背後の囁きが少しだけうるさくなった。おい、とか逃げろ、とか。震えるような、でも必死さが滲む声で仲間に囁かれ何だか照れ臭いようなこっぱずかしいような心地がしてふ、と笑った。



なあ、坊さんよ。
もう、俺は疲れちまったよ




「その棒で、俺を、殺してくれよ。」




目の前にいる男を、真っ直ぐに見つめて、そして目を閉じた。瞳を閉じれば瞼の奥には妻と娘と、何故だかあの二人が浮かんできた。


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