第4章 めぐりあい
いくら金目の物を奪い取り、人を殺そうが、腹がみたされる日が二日三日できるだけ。それが尽きればまた同じこと繰り返さなければならない。嫌なら道端に倒れて飢えていくのを待つだけだ。戦場で死体をあさり、登山者を襲い、命からがら逃げ、息をひそめるようにどこかに暮らす。物陰に潜んで眠りについた時でも物音がすれば目が覚め、刃物を手にしてしまう毎日だ。常に心が休まることなく、神経をすり減らしていく日々。
畑を耕し、妻や娘を養う暮らしは決して裕福ではなかったけれども幸せで満ち足りていた。ささやかなあの暮らしは二度と出来ないだろう。何もかも失った現実が変わることは、ないから。
一瞬身体を満たしていた優越感は形もなく消えていく。そして残ったのは、胸元に感じる虚無感と絶望だけだった。
もう、いいや。