第4章 めぐりあい
ひとしきり笑い終えた頭の顔が僅かに歪み、視線が手元に落ちていく。錫杖に打たれた痛みで麻痺していた右手にようやく血が通い、熱を持っていくのを感じたからだった。その右手を見下ろせば錫杖で打たれたそこは赤く腫れ上がっているのが見えた。
あぁ、これじゃあ鍬(くわ)も持てねぇじゃねえか。ぼんやりと、笑い声を出した口元をだらしなく開けたまま、そんなことを考える。
そっか、もう畑はないんだっけなぁ。
じんわりと、目もとが熱くなるのを感じた。鼻がつん、と熱くなり頬を何かが伝う。膝に土の湿った感触を感じながら両手で顔を覆う。
辛い、惨めだ、悔しい。そんな思いが胸元で次々と浮かび、膨れ上がっていく。生きるために必死で身につけた、人を殺める行為を、いとも簡単に目の前の男に遮られたことを思い出し、歯ぎしりする。いい身なりをした、何の苦労も知らないはずの男に負けたことがたまらなく悔しい。目の前にいる男をいくら言い負かしても何も変わらない現実にどうしようもなく苛立つ。そして、
当たり前のように人を殺そうとした自分に途方もない虚しさを覚えた。