第4章 めぐりあい
そんな錫杖を僧の姿である彼は軽々と持ち上げ、頭の顔に当たるか当たらないかのぎりぎりの距離にまで突きだしている。偶々そうなったのではない、こうなるように意図的に持ちあげているのだと頭は理解した。偶然ならその錫杖の重さにきっと手が震え、鐶がまた忌々しいほど涼やかな音色を鳴らすはずだ。それをまるで何でもないかのように持ち上げ、突きつける彼は―――。
背筋が寒くなったような気がして頭は身震いした。そして錫杖を突きつける彼を見上げようとして、顎を僅かに上に動かした。月の光を背にする彼の輪郭が淡く、ぼんやりと霞んでしまいそうになっている。あれほど恐ろしく思ったはずなのに、頭はその顔をよく見ようと、目を凝らした。
じゃらじゃらと通された鐶の、小さく美しい真円の中にその姿を見つけて。瞬間に頭はまたも震え上がった。