第4章 めぐりあい
かさり、と男が身につけた袈裟(けさ)が動いたのを頭の目がとらえた。そして
涼やかな音色が再び、夜の静寂(しじま)に響いた。
「うぅっ!!」
鈍い痛みが手の甲に走った。握りしめていた短刀が手を離れ、かーんと耳障りな音をたてると枝葉が散らばる柔らかな地面に転がった。
びりびりと静かに、しかし不快な痛みが手から腕を勢いよく走るのを感じながら頭(かしら)は呻き、地に伏した。鈍痛、とでも言うのだろうか。自分の腕であるはずなのにそれは酷く重く感じられた。
「死にたくなければ動くな、そんな風に先程もお前の仲間に言ったはずだが。」
自分の頭上から聞こえる男の声が脂気のない髪に隠れた耳に届いた。そしてそれを待っていたかのように右腕に鋭く、針で突き刺すようなような痛みが走る。収まりつつあった鈍痛に慣れ、安堵していた頭の男はまたひとつ呻いた。
うぅっと子供のように涙目になりながら地に伏した頭の男の体内では、突然の痛みで麻痺していた右腕全体に時間差をつけて勢いよく血がめぐっていたのだがそんなことは頭の知った話ではなかった。あまりの痛みと屈辱に、男は歯を剥き出し、威嚇するような顔つきで目の前に立つ彼を見上げた。
しかしその顔は次の瞬間、凍りついたように動かなくなった。