第4章 めぐりあい
なんだ、こいつ。
思わず口に出しそうになった声を飲み込んで、頭は暗闇のなかに浮かぶ『彼』をじっと見上げた。
橙色の明かりに照らされた『彼』は驚くほど大柄だった。そして深く、大きな傷が彼の顔には刻まれていた。額から眉間、鼻根(びね)を通り、左の頬へと伸びたその傷はきっと端正であったはずの顔立ちに暗い影と凄みを与えていた。
大柄な体をゆったりとした紫の着物が覆うなか、肩や胸元、腹を覆う金色の生地が闇のなかで怪しげに光っている。
手にされていた棒は長く、その先端は女に触れようとした男の肩にぴたりと置かれていた。ぶるぶると可哀想なくらい震えている男の肩で棒の先端からりん、りん、と微かに音が鳴っている。
「ただの坊さん、じゃあねぇな。
…………誰だ、おめぇは。」
低く、唸るような声で頭は彼に向かって問いかけた。松明を持つ手は微かに震え、手のひらにはじっとりと汗がにじんでいた。そんな手を彼には見られていないだろうか、と無意識に心配している自身に頭は軽い苛立ちを覚えた。
ゆっくりと流れていく雲の切れ間から月が少しずつ、その姿を表していく。