第4章 めぐりあい
女が一人、横に顔を向けた状態で倒れていた。長い髪が顔に影を作っているため細部は見えないがそんなことはどうでもよかった。見たことのない着物を身に付けている女の手足はすらりと長く、触ればきっと柔らかな肌は農作業に勤しむ女のそれではない。ほんのりと漂う匂いは嗅いだことないものだがきっと上等な香に違いなかった。
「ありがてえもんだ、こんな森ん中に女が寝転んでるとはよぉ。」
「酒にでも酔いつぶれたのか?不用心なもんだな。」
「酒の匂いはしねえからそれはないだろうな、しかしこりゃあ高く売れるぞ。」
「城下町の外れまで行くか?あそこの女郎屋は金払いがいいぞ。」
「まあ待てお前ら、ここは森ん中だ。少しくらい楽しんでも……なあ?」
そう同意を求める頭が浮かべた笑みは浅ましい欲望で酷く歪んでいた。
そしてその意味を理解した男達もまた、下卑た(げびた)笑みを浮かべて女を見下ろした。もう何日も女に触れていない彼らに道徳心と我慢は無駄なものでしかない。
ごくり、と唾を飲み込んだ男の一人が顔をよく見る為に、女の艶やかな髪をかきあげようと手を伸ばした。