第3章 めざめ
「 _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ 。」
雨音と、木の葉のざわめきにかき消されていく彼女の言葉。
もう一回言って、
そうお願いしようとした私の遥か頭上で一筋の光が走り、
凄まじい雷鳴が轟いた。
「ーーーーーっ!!」
思わず身を固くした私の周囲が一瞬で霞んでいく。突然のことにびっくりした私は周りをきょろきょろと見回し、足下を踏み外した。
(しまった!!
ここ、階段の一番上のだ、んーーー!!)
踏みしめていたはずの場所を失ってぐらり、と体が後ろに引っ張られるように傾くのを感じた。その弾みで足が側に置いてあったスーツケースにひっかかる。ゆっくりと斜めに傾いたそれは自身の重みに耐えきれずに勢いよく階段を滑り落ちていく。
(いや!落ちたくない……!!)
ががががが、と不吉な音をならしながら下へ下へと滑り落ちていくそれの音を聞きながら私はぶんぶんと手を上へ上へと振り回す。そして柔らかく、細い何かをぐっとその手に掴んだ。
(これって……。)