第3章 めざめ
再び目をあけると優希は目の前に佇む女性の濡れた目を見つめる。ずっと優しげに自分を見つめていた。先ほどまで伏し目がちになっていたけれど、再び自分を見つめる目。その奥には、強い何かが見えた。
武将のような目だ、と優希は直感的に感じた。もちろん見たことはないからその例えは本当ならおかしいのかもしれない、けれども。
きりっと引き締まった目で今、自分を見つめる目を優希はさらに見つめる。
その目の奥には強い覚悟と信念が見えた。潔ささえ感じられるそれ。きっと乱世を戦いながら生き抜き、何かあれば誇りを守るべく自らの手でその命に終止符を打った武将のそれと同じだ、と優希は思った。
そしてその目から決して自分のそれをそらしてはいけない、と感じた。そんな目で自分を見つめる彼女の言葉を聞きたい、と思った。
自分を見つめながら少しずつ、ゆっくりと唇を動かす女性。
そしてそれを息をするのも忘れて見つめる優希。
胸の中でこれ以上ないくらいに心臓がどくどくと鳴っていた。