第3章 めざめ
彼女を見かけ、追い求めるようになってからずっと頭のなかでぐるぐると駆け巡っていた疑問。追いついた時、真っ先に聞きたかったはずのそれは今になってなぜか言葉にするのをためらわれた。胸元に何かがつっかえたような不快な感触が気持ち悪くてたまらなかった。いつになく激しい鼓動が耳元でがんがんと聞こえる気がしてうるさい。
落ち着かなきゃ、そう思い喉元までせりあがって来た何かを唾と一緒に飲み込むと優希はゆっくりと目を閉じ、息を吐く。そしてまたゆっくりと息を吸う。身体中を、肺を満たしていく冷たい空気が今度はとても心地よく思えた。
おもむろに目をあけ、目の前にいる女性をしっかり見つめて、優希はたずねた。
「教えて、あなたは誰?
私をここに誘い出したのはどうして?」
冷たい風が二人の間を吹き抜けた。