第3章 めざめ
(もしおばあちゃんが生きていたら、今の私を見て喜んでくれるかな?それともちょっとがっかりするのかな?)
そう一瞬考えて、思わずにっこりした。きっとおばあちゃんなら喜んでくれるはずだ。私がお姫様のようになるんだと宣言した時にも驚いてはいたけれど喜んでくれた。私自身があの時聞いたお姫様のような性格や人柄になれたか、と問われれば微妙かも知れない。けれどもそんな風になれるように努力したし、あの頃の夢が形を変えて現れようとしてる。
『偉いわね、優希。頑張ってね。』
微かにお香の香りを漂わせながらおばあちゃんなら応援してくれる、そんな気がする。
(でも、あの時見たお姫様ってどんな感じだったけ。)
ふとそんな疑問が頭の中をかすめた。同時にスーツケースを片手に道の中で歩みを止める。
おばあちゃんの後ろについていき、縁側から少し離れたところにある部屋に入ったことは覚えている。でもその後どんな風におばあちゃんが絵を見せてくれたのか、そのとき見たはずのお姫様はどんな感じだったのかが何故か全く思い出せないのだ。
(ま、いいか。もしかしたらちょっとしたタイミングで思い出すかも知れないし。)
そう思い直して優希はまた歩きはじめた。ゴロゴロという音が優希の影と共に夕暮れの京都の賑わいに混ざり、そして溶けていった。