第3章 めざめ
あれからずいぶんと経った。友達にも恵まれ、凄く頭が良かったわけではないけれども大学までいかせてもらいたくさん勉強した。
その一方で両親に反対されながらもコツコツとデザインについて勉強したり作品をコンクールに出展したりもした。『おひめさまみたいになる』という小さい頃の夢が『女の子を皆、お姫様のようにキラキラとさせるような素敵な服を作りたい』という夢になったからだ。
それがやっと今、形となろうとしていた。去年の秋、過去のコンクールでの実績や作品を見た企業が一定期間契約を結んでくれることになったのだ。もちろん大きな仕事を最初から任せられたわけではないが成果をあげれば仕事の量も、責任の大きさも増える。
就職しながらもデザイナーになれるまで勉強し続けるのを覚悟で在学中に様々な資格を取った。同じく秋頃に高校で教員として働く内定ももらっていた。でも幸運なことにそれは使わないですんだ。今、京都にいるのもここまで頑張った自分へのご褒美として前々から計画していた旅行だったからだ。