第3章 めざめ
漬物やお菓子がおかれたお店ではその美味しさに思わず顔をほころばせながら売り子と話し込み、お香や匂袋がおかれた店ではその匂いに癒されながらもかつて祖母がまとっていた香りを無意識に探す。
そして美しい着物や反物がおかれた店先ではその美しさに思わず心奪われながらもゆっくりと生地に描かれた模様やその美しさを愛で、その生地をもとにどんな作品が作れるか頭の中で思い描く。
そんなことを通る店のほとんどで繰り返すうちに、日はすっかり暮れてしまった。泊まる予定の旅館にチェックインする時間が迫っていることにようやく優希は気づいた。
(あ、早くチェックインしないと!!口コミでは窓から眺める景色がとても綺麗だって書いてあったからはやく見てみたい!)
早足で京都の町を歩いていく優希の足元から黒い影がゆらゆらと不気味に動いていた。