第3章 めざめ
(ずいぶんとよく寝ちゃったんだな…)
そう思いながら私はスーツケースをゴロゴロとひく。日が沈みかけた京都の町を私はスーツケースとショルダーバッグを持ってゆっくりと満喫していた。黒の屋根瓦や紅殻格子(べんがらこうし)、虫籠窓(むしこまど)に白壁の京都の町屋に橙色の灯りがぼんやりと輝く様子は何だか幻想的に見える。
歴史の教科書や旅行のパンフレットでしか見ないその場所は人力車が行き交い、店の奥から甘いお菓子の匂いやお香の香りが漂い、混じりあっていた。少し遠くの方には鮮やかな簪を差し、しずしずと歩いてくる舞妓さんの姿も見える。
(それにしても懐かしい夢だったなあ。)
そう思うと優希は昼間に新幹線の中で見ていた夢を思い出す。幼いときに聞いた同じ名前のお姫様のお話。それを嬉しそうに語るおばあちゃんとお姫様のようになるんだと宣言した小さい頃の私。