第3章 めざめ
「………やっぱり忘れ物あった…」
そう呟くと座っていた座席の前に備えられていた黒いネットから、寝るまで読んでいた雑誌をさっと抜いてショルダーバッグにしまった。旅行の行き先を決めあぐねていた時に本屋で偶然見つけたその本はタイトルに興味をひかれ、気づけば買っていたものだった。
また後で読もう、そう思いながら優希はその雑誌をショルダーバッグにしまいこんだ。
『イケメン武将トラベルガイド』という題が大きく書かれたその本は財布やポーチにぶつかり、少し表紙がめくり上がったりしながらも優希の鞄の中に静かにしまわれていた。鞄の揺れに身を任せたそれが再び開かれるのはもう少し、先のこと。
降りる人々で混雑する前になんとか出口の扉の前に着いた優希の目が「京都」の駅名をとらえた。ガタンとさっきよりも大きく揺れ、ゆっくりと扉が開いた。