第3章 めざめ
そのときチャイムと共に機械がかった女性のアナウンスが聞こえた。まもなく到着する駅名と出口の場所、乗り換えとして使える電車の発車時刻についてだった。
駅名を聞いて優希は一気に目が覚めた。
「大変!急がなきゃ…!」
慌ててバッグを手に取り、上の方に置いたスーツケースを下ろすと優希は出口に向かって颯爽と歩いていく…はずだったが。
忘れ物がないか確認する作業がまだだったことに気付き座っていた座席に引き返す。出口に向かおうと荷物を抱えて歩いてくる人には「すみません」と小声で謝りながらなんとか目的地に着くと、優希は座席の回りを確認する。