第3章 めざめ
「んんっ…」
膝の上にぶるぶる、といった振動を感じる。お弁当やお菓子、飲み物の少し強い匂いが鼻をくすぐる。ガタンという音に合わせて
自分の身体が少し揺れるのを感じながら私は目を開けた。
青紫色の座先の背もたれと遠くの方にあるアナウンス板。目の端の方では緑豊かな田んぼとまばらに建っていた家がビュンビュンと飛んでいくように見えた。反対側を見てみればずらっと並んだ座席で音楽を聴く人や寝ている人、携帯をいじる人たちがそれぞれの時間を過ごしながら座っている。
「ここ、新幹線の中…?」
なんで自分が新幹線の座席に座っているのか、どこに行くつもりなのかを眠気で思い出せず、ぼーっっと横の方を眺めてしまう。
まだ続いている振動にふと膝の方に視線を下ろすと小さな携帯がぶるぶると震え続けていた。ぼんやりとした頭のまま携帯をいじると「到着三分前」という文字が画面に表示される。
「到着…どこにだっけ…?」