第6章 ひとつ 吉太郎の語り ー焦げ白銀(しろがね)という雨垂れー
橋ン上の情けねェ面ァ見上げる。
テメェもか。テメェもそうさな。
…けどよ、何ィ思ってやがる?
どっちも目ェから鼻汁ゥ垂れそうな面しやがって、だったらひろン側ィ居てやりゃいいだろ。
手ェ握って、気の利いた台詞のひとつも吐いてよ。ひろンヤツを笑わせてやりゃいいだろがよ。
わかってら。
どっちにもそりゃ出来ゃしねンだ。それぞれン都合ってモンがあらァ。
俺にもサ。
でえてェ(大体)俺らァ道化だィ。
こン妙ちくりんな死にかけの醜女ァ、誰が無くてもひとりで笑えンだから。
何時でもなンかしら喜んで、笑ってやがンだから。
うっつくな顔ォピカピカさしてよ。
とんだ傾城じゃねェか。クソ、逝っちまうのかよ、ひろ?