第6章 運動会
閉会式が始まった。
結果は僅差で俺達白組の勝利だった。
その後、MVPの表彰が始まる。
子供の部のMVPはゲーム機や自転車なんかを貰っていた。
そして大人の部のMVP表彰が始まる。
『会場に笑いを届けてくれた笑いのMVP、松野十四松さん前へどうぞ!』
「十四松やったな!!」
「わはははは、やぁったーーーーー!はいはいはいははーい、僕はここでーっす!」
子供のような声で再び会場に笑いを呼ぶ十四松。
十四松は商品券一万円分を手に満面の笑みで戻ってきた。
「見て見て一松兄さーん!」
「よかったね、十四松」
俺は十四松の頭を撫でてやった。
俺達が商品券で何を買おうかと話している間にMVP表彰も最後になっていた。
『では、これで最後になります!子供も含め、参加した選手の中で本日一番の活躍を見せてくれた真のMVPは・・・』
ドコドコとドラムの音が鳴って会場を焦らす。
皆誰だ誰だとざわめきたった。
『信じられないスピードで怒涛の追い上げを見せてくれた松野カラ松さんです!!』
ぽかんとする俺の肩を十四松が揺さぶる。
「やったね、一松兄さん!」
「お、俺じゃないし・・・」
十四松は笑顔をそのままに俺の顔をじーっと覗き込む。
俺はたまらなくなってコクリと頷いた。
それを見て十四松もうんうんと頷いている。
カラ松はおそ松兄さんとハイタッチをして前に出て行った。
『松野カラ松さんには温泉旅行二泊三日のペアチケットが贈呈されます!』
スピーカーから聞こえる声に俺達は声を上げる。
おそ松兄さんは俺がリレーに出ていればと悔しがっているようだった。
『松野さん、ペアチケットですがどなたと行かれる予定ですか?』
俺は思わずステージを見る。
そしてカラ松と目が合った。
カラ松は視線をそのままにグイッと司会の人のマイクを自分に向けさせた。
「もちろん、マイハニーと!」
わーっと会場が盛り上がる。
目を合わせたまま公の場でこんなことを言われて、兄弟の視線を集めた俺は顔から湯気が出そうだった。
「いいなぁ~、一松兄さん!」
「僕も行きたい温泉旅行!」
「俺に譲ってよ~!」
「お土産楽しみにしてるね♪」