第6章 運動会
一松side
リレーが始まってすぐおそ松兄さんとチョロ松兄さんが走って戻ってきた。
「カラ松、アンカーなのね!」
「そうみたいだね、でも赤組のアンカーにあの借り物競争で女の子と二人三脚してた男の人がいるんだよね」
リレーは各組から二組ずつ、計四組で競われていた。
カラ松のチームは序盤から最下位独占だ。
一方、借り物競争で女の子と二人三脚していた人のチームは二番手を走っている。
その順位は変わることなくアンカーにバトンが渡っていく。
半周でバトンパスだけど、アンカーは一周するようだ。
例の赤組の男の人は一気に追い上げ一つ目のコーナーで一位に躍り出て歓声が上がる。
その瞬間、それとは別に歓声が上がった。
アンカーのスタートラインよりも向こう側から皆の視線がこちらに流れてくる。
その視線、歓声が向けられた場所にいたのはカラ松だった。
俺の鼓動が高鳴る。
真剣に走るその姿だけでもドキドキするのに自分の兄弟とは思えないくらい早い。
「あいつ、俺と走った時は本気出してなかったのね・・・」
おそ松兄さんがひゅーっと口笛を吹く。
カラ松はぐんぐんと追い上げていく。
俺は痛いくらい鳴る心臓を押さえながら心の中で頑張れ!と叫んでいた。
すると誰かにグイッと肩を掴まれる。
驚いて見やるとおそ松兄さんだった。
おそ松兄さんは顎でクイッとグラウンドを指す。
俺はおそ松兄さんのいた場所に体を割り込ませて叫んだ。
「カラ松っ!頑張れ!もう少しだよ!」
するとカラ松の視線が俺に向く。
馬鹿っ、こっち見てる場合かと言ってやろうと思った瞬間黄色い声が俺の耳を劈いた。
カラ松が更に速度を上げたのだ。
俺達のいる場所の少し手前。
ゴールテープ直前で一歩赤組の男の人の前に出た。
そしてカラ松の体にゴールテープが纏わりつく。
そこら中で物凄い歓喜の声やら女の人のきゃーきゃー甲高い声が響いていたけど俺の鼓膜は違う音を響かせていた。
「一松っ!!」
ゴールテープを切ってそのままの速度で俺のもとに掛けてくるカラ松。
俺はガバッとカラ松の腕の中に納められる。
「やったぞ!一松、お前のおかげだ!」
「じゃぁ、商品券は俺のだね?っていうかたかが商店街の運動会で頑張り過ぎじゃない?」
「フッ、まぁ楽しみにしていてくれマイハニー」
俺達は閉会式でその言葉の意味を知る事になる。