第21章 二人旅(旅行編)
2月14日
カラ松side
目の下にたっぷりとクマを蓄えたブラザー達とテーブルを囲んで朝食をとっている。
というのも、昨晩俺を助けるために幽霊の封印を解いたようで、女の笑い声がしたり、足を掴まれたり首を占められたり、とにかくとんでもない目にあった。
お陰で一睡もできずにこの状態だ。
今日はお祓いに来てくれるというので、今晩は早いこと布団に入ろうという会話だけで食事が終わった。
今日の予定をトド松に尋ねると、ひと際やつれた顔のトド松はふらふらと自分のカバンのもとに行き、何やら持って戻って来た。
その手にはパンフレットが握られている。
「今日は自由行動だよ、好きなようにして~。僕はショッピングを楽しんでくるから」
俺は渡されたパンフレットをパラパラとめくって一つ気になるものを見つけた。
「一松、俺と回らないか?」
「え・・・俺眠いんだけど」
そう言われては連れまわすのもかわいそうだと思っているとチョロ松が俺からパンフレットを奪って一松にそれを見せた。
「せっかく来たんだから遊ぼうよ?カラ松となら移動時間寝れるじゃん?」
な、カラ松と気を利かせてくれたけど、「一日中おぶってやろう」と言った俺の言葉は無視して、パンフレットを何カ所か指さして一松に勧めている様だ。
一松も気になるものでもあったのか小さく頷くとパンフレットの角を折ってショルダーバックにしまってそれを肩にかけると、俺の傍に来る。
「ほら、行くんでしょ・・・」
「あ、ああ!!行こう!」
俺はまだどこに行こうかと悩む兄弟達に高々と上げた手を振って部屋を出た。
旅館を出るとあの松の木が霜を蓄えていて、それが朝日に照られてきらきらと輝いていた。
「今日はいい天気だな」
寒さはまだ和らいでいないものの朝日を見ていると寒さを忘れられる様だ。
白い息を吐いてはいるものの、一松も穏やかな表情だ。
赤く染まった一松の指を握る。
するとすぐに振りほどかれてしまった。
「人目があるんだけど」
不機嫌な顔になってしまった一松の手をもう一度取って俺のポケットに誘う。
俺のポケットの中はよほど心地がよかったのか、今度は素直にそれを受け入れて、だけど少し俯いて歩き出した。
耳が赤くなっているのは寒さの所為か否かを考えながら旅館を後にした。