第6章 運動会
綱引きの後、高木って人がいないのを確認しているのかきょろきょろしておそ松兄さんが僕に声をかけてきた。
「トド松、大丈夫だったか?変な事された?」
「見てた通り変な事されたよ!気持ち悪かったぁ~。あれ以上のことはなかったけど・・・ちょっとカラ松兄さんの気持ちが分かったかも」
僕は思い出すだけで鳥肌が立って胸の前で腕をクロスし、二の腕を上下に擦った。
「ねぇ、このことカラ松兄さんに・・・」
「いや、誰にも言うな。本当に向こうには悪気はなかったのかもしれない。あいつが変質者だとかいう決定的な証拠がない限り警戒心ビンビンのカラ松に変な話はしない方がいい」
「それもそうだね、カラ松兄さんが犯罪者になりそう・・・」
僕とおそ松兄さんは見合って苦笑いした。
テントに戻るとすぐにチョロ松兄さんとおそ松兄さんは二人三脚に出るため入場門に向かった。
二人三脚はチョロ松兄さんの言う通りおそ松兄さんと組まされたらしくあの作戦会議の日からちょいちょい言い争っていた。
というか、チョロ松兄さんが一方的に怒っていた。
チョロ松兄さんは練習しようというんだけどおそ松兄さんが練習を嫌がってパチンコや競馬に逃げるからだ。
結局練習できなかったらしく、入場門に向かう間だけでもいいから合わせようというチョロ松兄さんからおそ松兄さんが逃げてまた喧嘩しているようだった。
僕達は呆れながらその光景を眺めていた。
二人三脚の選手が入場してくる。
チョロ松兄さんの機嫌は悪そうだった。
「大丈夫かな?」
僕が言うとカラ松兄さんが大丈夫だろという。
「あいつら昔っからいざという時は息が合う。喧嘩でやり合う時もいつもチョロ松がフォローするのはおそ松だっただろ?おそ松とは阿吽の呼吸で分かり合えるのさ」
何だか寂しくなった。
何故?何が?と問われると分からないけど胸のあたりがチクチクする。
多分、自分にはそんな存在が居ないからだろうか?
チョロ松兄さんはおそ松兄さんと、一松兄さんは十四松兄さんと、そして、カラ松兄さんは昔から一松兄さんの事には敏感だ。
そんなことを考えていると十四松兄さんが僕の顔を覗き込む。
「トッティー、大丈夫?」
「え?あ、うん!なんともないよ!」
「次、おそ松兄さん達だよ!」
「ホント!?いつの間にっ、応援しなくちゃ!」