第6章 運動会
チョロ松side
僕達がお弁当の準備をしているとおそ松兄さんが戻ってきた。
「おそ松兄さんっ!カラ松、救護テントに来たの!?」
「来たっていうか、俺が行った時にはもう居た。一松が大丈夫だって言うから大丈夫だろうと思って戻ってきた」
僕はほっと胸を撫で下ろした。
おそ松兄さんがカラ松を追いかけて行って何を話したのかは知らないけれどきっとその会話がなければ一波乱あっただろうと思う。
奇跡の馬鹿でどうしようもない兄さんだけどいざという時は頼りになる。
僕は兄さんにお礼を言った。
兄さんははにかみながら鼻の下を擦った。
それから間もなくしてカラ松と一松が戻って来る。
カラ松は心底心配そうな顔をして一松の体をペタペタと触っていて、一松は恥ずかしさと怒りでプルプル震えていた。
「カラ松、いい加減にしないと一松に捨てられるよ」
僕はため息を履いて一松からカラ松を引きはがした。
一松の右手には湿布が貼られている。
「軽い突き指、大丈夫」
俺の視線に気が付いたのか一松が手をプラプラとしながら言う。
大丈夫でっかと一松の周りをぐるぐる回る十四松の頭を一松がよーしよーしと犬をあやすように撫でている。
その横で泣きそうなカラ松をおそ松兄さんがよしよしと慰める。
トド松はお弁当と自分をスマホで撮っている。
そんな光景を微笑ましく眺めつつ、皆を座るよう促して座った順に箸と取り皿とおしぼりを配った。
「「「「「「いっただっきまーす!!!」」」」」」
僕とトド松、そしておそらく一松も・・・
カラ松の箸の行く末をこっそり見守っていた。
カラ松は伸ばした箸をひっこめると左手に持ち替え、箸を持たないまま右手を伸ばす。
その手はお弁当箱の中のネコ型のピックをつまんだ。
期待を裏切ることなくカラ松の手が唐揚げを口へと運んだ。
もぐもぐと噛み締めるたびにカラ松の表情が緩んでいく。
「んんん~~~~!セラヴィ~~~~!!!」
僕とトド松はハイタッチする。
「トド松とチョロ松が作ったのか!?今日の唐揚げは最高だ!」
僕とトド松は顔を見合わせてニヤニヤする。
「何だ、二人ともニヤニヤして気持ち悪いなぁ・・・」
持っていたピックを二つ目の唐揚げに刺してカラ松が言う。
何か入っていると思ったのかカラ松は唐揚げと僕達を交互に見て食べる手を止めてしまった。