第6章 運動会
おそ松side
きっとカラ松の本能が高田って人を一松に近づけちゃいけないって言うんだろう。
俺はそう解釈した。
カラ松の本能がどれほど正確かはわからないけど、一松の事になるとあいつは普段の鈍感さからは想像できない能力を発揮するし・・・
その能力で一松がうなされてるのも気づいてこれたんだろうしとりあえず無理に抑え込まないでおくことにした。
テントに戻ると騎馬戦は既に始まっていた。
「一松兄さんすっげぇえええ!!」
十四松達が興奮した様子で見つめる先に一松の騎馬があった。
一松の手にはここから見てもわかるほどの鉢巻きが握られていた。
そして頭には左右にくるくると回るものがある。
・・・耳?
俺はあの路地裏での出来事を思い出した。
だけど、顔は今のところ毛むくじゃらではないみたいだ。
そして耳の存在には皆気づいていないようだったので黙っておくことにする。
一松は後ろから近づく騎馬にも素早く反応していた。
兄弟からまた一つ新しいジャンルができたなと思った。
気が付くと両者一騎ずつになっていた。
一松の騎馬が残っている。
一松は自分の額に伸ばされた手を的確に払いのけた。
その勢いで相手の体がのけぞり、バランスを崩して倒れた。
ピッピーっと終了を告げる笛が吹かれたと同時に悲鳴にも似た声が上がる。
突然、一松の体が浮きあがったようになりそのままバランスを崩して左側に投げ出された。
半分ネコ化して身体能力の上がっていた一松だったけど気づけば耳は消えていた。
頭を下向きにして背中から落ちて行く一松。
あの落ち方は危険だと頭の中で警鐘が鳴る。
スローモーションのように見えるが実際そうではないので勿論俺の足で間に合うはずもない。
しかも、居酒屋のおっちゃん達は完全に気が抜けていたのか反応に遅れている。
ダメだ、間に合わないと思った時だった。
高田って奴が居酒屋のおっちゃんを押しのけて一松を抱きとめた。
勢いづいていてゴロゴロと二回転ほど地面を転がったけど、危険な着地は免れてほっとする。
十四松とトド松も目に涙を浮かべて胸を撫で下ろしていた。
高田は一松を抱き上げて救護テントに向かったようだった。
一松は下ろせと暴れているように見える。
俺はふとカラ松の事を思い出した。
ちょっとヤバいかな?
俺は再びチョロ松達の元を離れて救護テントに向かった。